10 日々平安
2 道
2009年7月19日 日曜日
午後3時。山梨県。
さっきまで交通量の多い広い道を走っていたはずだった。
それが、今は生い茂る木が高すぎて太陽が見えない。下を見れば、積もった木の枝と土の間から、かろうじて舗装されたコンクリートが見える細い道。
ここまで来て、ようやく自分が迷っていることに気づく。
いや、気づいたのではない。
この時私は、道を間違えたことを「認めた」のだ。
この道じゃないかもしれないという思いがよぎってから、ずいぶん走ってきていたから。
相変わらず、遅すぎると思う。
バイクでも車でも、すぐにとまって引き返す勇気がなかなか身に付かない。
車の中では、バッハの「ゴルドベルグ変奏曲」が流れていた。私はバッハのなかでこの曲が2番目に好きだと思う。
それにしても、私はよく道を間違える。
旅でも、人生でも、同じ間違え方。どちらに行こうかと迷うのではなく、正しいと思い込んだ方向しか見ていない。
遮眼帯をつけた馬を思う。いや、馬には似ていなかった。
自分で決めてきたことだから、私は自分の人生を気に入っている。
ただ、間違えたとまで言わなくても正しくはなかった選択がいくつかあるのは確かで、それを認めるのは、遠いところで、全然知らない景色で、ひとりになったとき。
誰だってそうだろうか。
みんな道を間違えながら生きていくのだろうか。
昨年、北海道での事故をきっかけに、バイクを一時降りることを選んだ。
人の言葉をあんなに真剣に聴いたのも、あんなに迷ったことも、たぶん人生で初めてだった。
情けないのは、ようやく選んだあともなお迷い続けていること。
やらないと決めたなら、きっぱり忘れるはずなのに。
この道は、どこに続くのだろう。正しいかどうかなんて、全然分かりそうもない。

事故は、大したことなかった。怪我も全然ひどくない。
だから、「そんなことでバイクを降りるな」と叱ってくれる人がいた。
ありがとうございます。でも、今は時期じゃないんです。
書いていて苦しいうちは、私はバイクに乗らない。
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